単細胞生活

怖いネコの話 パート2

カツはあんなこと(前日の記事参照)をしたとしても、立派な母ネコだったのには間違いがないです。
普段は利口で、ネコらしいネコでした。

しかしこれからお話するカツの初めての子ゴクは正真正銘の化け猫でした。

ゴクはカツの初めての子の一匹として生まれ、生まれてから2,3ヶ月はそれはもう元気で猿みたいで(ゴクは孫悟空の略)、我家の家族から大変愛されていました。
ところが半年くらい経ったころ、何故だかゴクの首の付け根がコブ状に腫れあがりました。
すぐに車に乗せて近所の動物病院に連れて行きました。
古ぼけた病院に入ると、中から「あなたが病院へ行ったほうが」と思うようなご老人が現れました。白衣は着ていますが、足元がおぼつかない感じでした。
ゴクを見るとご老人は一言、「注射しておきましょう。」
なんの注射?と問う間もなく、ご老人は注射器を取り出し、おもむろにゴクの太ももに射したのです。
あっけにとられていた私と母と妹は、もちろんゴクの体を押さえるということもしていませんでした。
射したのは速かったものの、注射のスピードはそれはまた驚くほどにノロい。
その上その手は明らかにブルブルと音をたてて震えておりました。
ゴクは一瞬固まったものの、もちろんすぐに暴れ出しました。
ご老人は驚いたようでしたが、手に持った注射器の位置はそのまま変わらず、針だけがゴクの体に残されていました。
そのままゴクは広くて古い病院の奥へと消えてしまったのです。
動物のお医者さん (第6巻)






小一時間してなんとか探し当てたゴクの体には針がささったままでした。
ご老人は震える手で針を抜き、「今日はお金はいらんよ。」とだけ言い残し奥へ戻っていきました。
「治療は?病名は?」
何もわからぬまま、まだパニクっているゴクを抱えて家路につきました。

次の日ゴクはコブを足で引っかき、中から血と膿が飛び出しました。
血は家の白い壁に飛び散りました。怒った母はゴクの体に包帯をぐるぐる巻きにまきつけました。
家には他にゴクの兄弟が3匹、それとカツ、クロ、ヨモという大人のネコが3匹いました。
幼いゴクの兄弟たちは、白い包帯でグルグル巻きのゴクを避け始めました。
姿が変だというより、あの病院事件以来すっかり行動自体がおかしくなってしまったのです。
兄弟たちに遊んでもらえなくなったゴクは更におかしくなりました。
更におかしくなるとついには親のカツにさえ相手にしてもらえません。
愛に飢え始めたゴクは、今度は人間にまとわりつきはじめました。
それはそれは大変にウザイ。どこへ行ってもついてくる。座った人のひざの上にとにかく乗る。
不憫に思いながらも、完全にみんなから疎ましく思われていました。
なんせ可愛かった顔は見る影もなく、目つきはアブないし、形相は化け猫そのものなんですから。

傷はやがて治りましたが、みんなから浮いていることだけは変わりありませんでした。
ゴクはいつも一匹離れたところにおりました。他のネコが遊んでいるのを物陰からジッと恨めしそうに眺めていました。
高校生だった私を筆頭に子供たちは忙しく、両親は共働きでほとんど家には誰もいません。
唯一ヒマにしていた末の小学生の妹は、小学生らしく(?)ゴクを決して可愛がりませんでした。

やがてゴクも子供を産みました。けっこうたくさん産みましたが、どれを見ても普通の子猫は生まれませんでした。

最初に子供を産んだとき、ゴクは世話をしませんでした。ただ一週間前にカツが子供を産んでいたので、その中にゴクの生んだ子供を入れておきました。
カツは一度にたくさんの子育てをしましたが(夏だったので普通に育てていた)、生まれたての一週間は大きさも力も倍以上違っていました。
ゴクの子供は一匹の超たくましいゴクミというのを残して全部死んでしまいました。

ゴクミはメスでしたが、首がものすごく太くて、体自体も普通のオスより大きかったのです。
その上家人に全くなつかずに野良猫になって家を出て行きました。

次の年にゴクが産んだやつは目も当てられませんでした。
ネコはこっそり子供を産みますが、ゴクは居間の真ん中で産もうとしました。
部屋の隅にダンボールを置き、その中に無理やりゴクを入れました。
まず出てきたやつは腸の一部がおしりから飛び出していました。
次に出てきたやつは一見マトモでしたが、あとから盲目なのに気づきました。
三匹目は中味のないヤツが出てきました。気持ちが悪いのでみんな遠巻きに見ていました。
そのあと中味だけ出てきました。もちろん誰も正視できないので、ゴクが処分するのを待ちました。
先に生まれた二匹もすぐに死んでしまいました。それはちゃんと庭に埋めました。

次の年は色のない真っ白なネコが二匹生まれました。目も赤く、まつげの果てまで白いシラコってやつでした。
これも弱くてすぐに死んでしまいました。

次の年に生まれたヤツがゴクの最後の子供でした。
こいつはめずらしく大変丈夫でした。でも全く人間になつきませんでした。
あっきーと名づけましたが、姿をまともに見せたことがありませんでした。
でも自分があっきーだということは知っているようでした。
数年で彼は近所中の野良猫のボスになっていました。
道路の真ん中をのしのしと歩いてくるので、「あっきー」と声をかけると、ふりむきもせず「にゃー」と答えました。

ゴクはあっきーを産んだ次の年にいなくなりました。
いなくなる直前、吹雪の雪山で丸くなって半分埋まっているゴクを見つけました。
「ゴクちゃん!」と叫ぶと「にゃ」と起き上がりました。死んだフリをしていただけでした。
ですが次の日そのままいなくなってしまいました。

現在実家にはもらってきたオスネコのゴロが一匹だけ。
ゴロは家から一歩も出ず、虚勢手術も受け、もう9才になりましたが色艶もよいです。
ゴクがいなくなってから、ネコたちは一気に少なくなりました。
ゴクがいなくなる前の年に何かの伝染病にかかり、カツとゴクとトラ以外はみんな死んでしまいました。
カツが最後に産んだしーちゃんが大きくなるころには他に誰もいなくなりました。
しーちゃんはオスでしたので、しーちゃんがいなくなったとき、我家をネコ屋敷にさせたネコの血は絶えてしまいました。
延べにすると何十匹のネコが家にいたかわかりませんが、やっぱりゴクは忘れようにも忘れられない強烈なネコでした。

ちなみにゴクをあんなふうにしてしまった(と私たちは思っている)病院のご老人は、ゴクよりも早くこの世を離れてしまいました。大変な名医だったらしいです。
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by dayu2004 | 2005-03-11 00:43 | むかしばなし
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