単細胞生活

2005年 10月 03日 ( 1 )

「博士の愛した数式」

博士の愛した数式
小川 洋子 / 新潮社




20代後半の家政婦とその10歳になる息子、そして「博士」と呼ばれた家政婦先の年配の数学者の物語。
博士は17年前、事故による脳に障害で80分しか記憶が持たないという難病の持ち主。
博士は数式や数学しか愛さず、家政婦はコミュニケーションをとることが困難でしたが、
タイガースファンの息子「ルート」と博士とが出会うことにより、その日常に変化があらわれはじめます。

前日にどんな大事件が起きようと、翌日になると記憶がない博士。
毎朝通いでくる家政婦に靴のサイズを聞くことから1日が始まります。
博士の昨日と今日の唯一のつながりは体中に貼り付けられたメモ。
そこに「新しい家政婦さん(似顔絵つき)とその息子10歳 ルート(√記号に頭の形が似ているから)」と書かれたメモと、前日に博士がルートに出した宿題のメモとが頼り。
数学以上に子どもが好きな博士は、ルートと数学やタイガースの話をして時を過ごします。

博士の言葉はルートにかける優しい言葉以外は、ほとんどが数式のことだけ。
意味はわからなくても徐々にその数字に愛情を覚える家政婦。
ルートは父親のいない野球好きの少年で、多忙な母に甘えられず愛情不足だった為か、
博士からのストレートな愛情を素直に受け入れます。

数式・公式・素数・虚数・対数・・・
学校ではずっと習っていたのに、今では生活とはいちばん遠いところにある数学。
もう一度勉強したいとは思わないけど、出てくる公式や数字は美しいものばかり。

たとえば、

博士の好きな野球の選手は江夏。江夏の背番号は28。
28の約数を全部足すと(1,2,4,7,14)28になる完全数。
1000以下の完全数は6と28と496だけ。

とか。

野球場の座席の番号とか、家政婦の誕生日、足のサイズなど、博士は聞いた数字に何でも意味を持たせます。


深刻になりがちな博士の病気もほのぼのと描かれ、ルートと博士のやりとりは何気ないのに感動的。
ルートのちょっとしたケガも、野球観戦も、キャンプに参加して留守にしているときも、3人にとっては大事件。
何気ないのにドキドキして、ノンストップで読めてしまいます。

寺尾聡と深津絵里とで映画化され、来年の正月に公開します。
[PR]
by dayu2004 | 2005-10-03 08:53 | 読書